外資系投資銀行への道標

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外資系投資銀行で抜群に優秀なバンカーの7つの特徴

2018年2月14日更新 2016年12月20日公開

東大をはじめとしたトップ大学のなかでも厳しい選考をくぐり抜け、入社後も過酷な生存競争を生き延びているエリートばかりの外資系投資銀行。

そんな中でも飛び抜けて優秀なバンカーというものは存在します。

ここではエースバンカーと呼ぶことにします。

 

エースバンカーは、優秀なバンカーの中でもさらに50人に1人くらいの出現率です。

私も上司で2人、同期で1人、部下で1人、とんでもなく優秀で越えられない壁を感じた人たちがいました。

いったい彼らのなにがすごいのか、肌で感じた私の考えを書いてみたいと思います。

 

なお、「地頭が良い」とか「記憶力が良い」、「コミュニケーション能力が高い」といった、分かるようでさっぱり分からない曖昧な表現はできるだけ避けました。

 

また、あくまでエースバンカーの特徴を記載しているだけであって、エースバンカーの条件ではない点を改めて付記しておきます。

必要条件だが十分条件ではない、ということです。(数学的な意味で)

 

ちなみに、ディールの取れないバンカーについてはこちらでまとめています。

クライアントとして投資銀行のバンカーにガツンと言っておきたいこと

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1. 最初から最後まで自分で判断を下せる

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仕事とは意思決定をすること

投資銀行において、「言われた通りの仕事をする」ということは一見簡単なようですが、ボスの要求水準が非常に高いため、言われた通りにタスクをこなすことすら難しいのが実際です。

しかも山のようにタスクが溜まり、未読メールはどんどん増えている状況下ではなおさらです。

限られた時間内で、言われた通りに財務モデルを作ったり、綺麗なスライドを作ったり、難しい分析をしたり。

言われたとおりのことをきちんとできるようになったらようやく一人前のバンカーとして認められます。

 

そんな中、エースバンカーは一味違います。

彼らは手を動かすことを仕事と考えていません。

彼らは「仕事とは意思決定をすること」であると完全に理解しています。

意思決定こそが最重要であると。

限られた人・時間の中で最善のパフォーマンスを生み出すには何に注力して何を捨てるのか、それを状況に応じて常にジャッジしています。

大切なのは意思決定の質と量

具体的に事例を見てみたいと思います。

以下はどこの業界でもよくある日常の現場風景です。

 

例えば普通のサラリーマンのAと優秀なBがいたとしましょう。

あるとき、AとBはボスからやっかいな仕事を振られました。

「新興国にある某企業について、20分でできるだけ調べてくれ」という依頼です。

聞いたこともないような企業名でした。

しかもたった20分しかありません。

 

Aは自席に戻ったものの、顔は曇っています。

どうしよう、とりあえずググってみるか。...まじか、現地語しかないじゃん、読めねーじゃん。

google翻訳でも何言っているかサッパリだわ。

じゃぁCapital IQかSPEEDAで探してみるか。

...ないじゃん、無理じゃん。

あとはBloomberg端末でも一応叩いてみるか。

...なんかよく分からんが、企業名で1つだけヒットしたぞ。

あとは社内の産業調査部に依頼して調べてもらうしかないけど、時間かかるから明日になっちゃうだろうな、20分以内には絶対に間に合わない。

うーん、でもこれ以上は難しそうだし、先輩に相談してみるか。

でも先輩も忙しそうだしな。

そもそも何のためにこんな企業調べる必要があるんだよ。

うぉ!もうあと5分しかない!

せんぱーい!どうやって探せば良いですかね!?

 

Aは、一応できる範囲で調べたような感じはありますが、結局企業についてほとんどわからず、成果はほぼありませんでした。

対してBはどうでしょう?

 

Bは自席に戻るとA同様、まずGoogle検索をしています。

しかし現地語しかないとわかるとすぐに諦めてCapital IQ、SPEEDA、Bloombergを並行して調べ始めました。

Bloombergでヒットした1件のレポートを印刷し、どこかへ1本電話をしているようです。

3分ほどで電話を終え、早くもボスのところへ向かいました。

ここまでで10分経っていません。

ボスに向かってBはこう言いました。

 

現在手元で使えるソースで簡易に調べましたが、結論から申し上げるとご所望のデータはありませんでした。

調べたソースは○と△と□です。

唯一こういったレポートがありましたが、読める人間がいないので企業概要部分を翻訳チームに投げる必要があります。(資料サッ

翻訳には40分ほどかかるそうです。

本件はクライアントからの要望と伺っておりますが、提案資料の本編に入れるほどの内容ではなく、Appendixに入れる内容かと思っています。

だとすると優先度的に劣後するので、翻訳を待つのと並行して産業調査部にも調査をお願いして、明朝改めて結果をご報告させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?

 

つまりBの思考回路はこうです。

簡単に調べてみたが成果はなさそう。

これ以上自分のリソースをここにかけても仕方ない。

全体の中で優先度高くないからあとは専門部隊に任せて、ボスには方針だけ先に報告しておこう。

報告は早い方がそれだけ軌道修正がしやすいはず。

 

AとBのそれぞれの対応、いかがでしょうか。

両者の最大の違いは意思決定の質と量です。

Bは常に上司のポジションから意思決定をしています。

自分がボスならどう考えるか、という視点を持っています。

 

一方Aの場合、先輩に相談をするということは大切なことではあります。

しかし聞き方はきちんと考えないと、単に意思決定を他人に委ねているだけになってしまっていますよね。

リーダー経験は意思決定にさらされてきた度合いを測るものさし

海外では、幼少からリーダー育成を重要視していますが、それはなぜでしょう?

また、日本の就職面接においても、猫も杓子も「リーダー経験」を聞きたがるのはなぜでしょう?

チームメンバー全員がリーダータイプだったら、そんな偏った構成じゃ何もできないじゃないか。

 

違うのです、そうではありません。

 

リーダーポジションについたことがあるというのは、自分自身で最終判断を下す経験をしてきたということです。

だってリーダーの後ろには誰もおらず、他の人に意思決定を委ねられないポジションなのですから。

リーダー経験が多いほど、そのような場面は多かったと推察できます。

 

ここで大切なことは、意思決定ができるかどうかは頭の回転の速さとかコミュニケーション能力の高さとは関係がないということです。

合コン幹事のヘタクソな東大生の方が圧倒的に多いのです。

つまり経験をどれだけ積んできたかが大切なのです。

最初は間違うことも多かったでしょう。

反発を招いたことも少なくないはずです。

でもリーダーはその度に歯を食いしばって成長してきたのです。

そして意思決定の訓練をするにはリーダーになるしかありません。

ですからリーダー経験というのは、リーダーが欲しくて聞いているというよりは、業務においてどれだけ責任ある意思決定を適切にできるかを探っているわけです。

 

エースバンカーの特徴として、この意思決定ができるということが漏れなく当てはまるため、リストの最初に持ってきました。

■エースバンカーとはビジネス界のスーパーサイヤ人、ビズリーチ!

2. 上司から指示を受けているようで、実はディレクションしている

上記の例をもう一度見てください。

Bはボスに対してAppendix(=ご参考)にいれる提案をして、スケジュールも明朝にしています。

最終的にどうするかはボスが決めてはいるのですが、その実、Bは自分の提案が承認されるだろうと思って話を持って行っています。

なぜならBがボスの立場ならそれを採用するからです。

 

エースバンカークラスになってくると、意思決定の量と質が一つ上の職位のものと同等です。

アナリストならアソシエイトの仕事を、アソシエイトならVPの仕事をイメージして仕事をしています。

したがってボスが指示を出しているように見えますが、その実、優秀な部下バンカーが資料作りを取り仕切っているというわけです。

 

ただ、こういう書き方をすると、「じゃぁボスいらないよね?」って話になりがちですが、そうではありません。

上記はあくまでオフィス内での業務を指しており、ボスが注力すべきはむしろ折衝・交渉やクライアントとの関係構築、クライアントへのプレゼンなどの、オフィス外での活動です。

エースバンカーは、ボスがそこに注力できる方法を考えた結果、現場の仕事は自分たちができるだけ巻き取るべきだと判断しているのです。

(ただでさえオーバーキャパシティなのに、さらに巻き取るという判断は普通のバンカーには真似できない)

3. スーパーワーカホリック

ではどうして優秀なバンカーは、普通のバンカーが躊躇するような判断を当然だと思えるのでしょうか?

それはエースバンカーがスーパーワーカホリックだからです。

 

若手のうちは月180時間以上の残業をするバンカーですから、他のどの業種より圧倒的にハードワークであり、ワーカホリックな人間しか生き残れません。

ただ、エースバンカーのワーカホリックさは、同じバンカーからみても変態的なものでした。

 

とあるVPのエースバンカーが私に言ったのですが、

「俺がアソだった頃、人事からきちんと勤怠をつけるように注意されたから正確に付けてみたんだが、月400時間残業していたことがわかった」

と笑いながら話していました。

もはやどう解釈して良いかわからないレベルです。

エースバンカーは眠らない

もう少し具体的にエースバンカーのワーカホリックさを説明していきます。

まず、新卒であれ中堅(入社6年以上とか)であれ、エースバンカーは毎日だいたい9時から27時まで仕事をします。

ですが、エースバンカーは仕事が終わって帰宅した後でも部下に進捗確認の連絡を入れて来ます。

たまたま徹夜組の誰かが朝の5時に「明日出社されてからで良いので、朝一で○○について教えてもらえますか?」とメールをしたとしても、わずか1分後には即レスで回答が返ってきます。

いつ寝ているのか全くわかりません。

そもそも寝ているのかどうかすら怪しいのです。

趣味は仕事

また、通常土日のどちらかが休みになることが割と多いのですが、エースバンカーは土日も出社しています。

抱えている案件をこなしたり、クライアントの勉強をしたり、過去に他部署のチームが提案した資料を読み込んだりと、やることは尽きないという感じでした。

「有給を取ります(休むとは言ってない)」

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エースバンカーも年末年始などで年に何度か連休を取ることがあります(さすがに働きすぎなので会社が休ませるようボスに勧告する)。

しかし、必ずBB(=Blackberry:社用携帯)とリモートPC(=社用PC)を持参しているので連絡が途絶えることは当然ありません。

休暇中も指示や完成資料がバンバン送られてくる、という状態でした。

 

「優秀なバンカー」としては、終電までには帰るということを徹底し、無駄を省き、仕事の効率化を極めるというスタイルももちろんありますが、エースバンカーはそれらに加えてワーカホリックであると考えています。

■お願いだから休んでよ、寝てよ!そして僕らを解放してよ!ビズリーチ!

4. エクセルワークが頭抜けている

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ワーカホリックを支える技術のひとつにエクセルワーク・パワポワークがあります。

ここがしっかりしているからこそ、どんなに無尽蔵にタスクを抱えてもやり遂げられるのです。

 

バンカーは常にエクセルとパワポに向き合う仕事なので、他のどの業種よりもエクセルワークに長けています。

エクセルハックのため、通常いじらない設定までカスタマイズしますし、要らないキーもキーボードから抜いて穴だらけにします(上図)。

 

ただ、エースバンカーのそれは頭抜けていて、使えるショートカットの量やキータッチの速さだけでなく、本格的な分析をするときのエクセルの構成力・クリエイティビティであったり、誰が見ても使いやすい・分かりやすい・リユースしやすいものにするセンスにまで至ります。

エースバンカーが本気を出して作った分析ファイルや資料は、知らない間に他セクターのチームにも共有されていて、いつの間にか投資銀行部のテンプレートになっているということもよくあります。

5. ボスには絶対にノーと言わない

またエースバンカーたちの特徴として、ボスからの難題に対して絶対にノーと言わないということが挙げられます。

これをイエスマンだと片付けてしまうのは、いささか早計です。

 

明らかにショートノーティス、リソース不足、オーバークオリティの要求がボスからあった場合でも、エースバンカーが首を横に振ることはありません。

もちろん、ボスも合理的な理由なくそのような要求はしませんが、とはいえ普通のバンカーは「言うことはわかるけど、でもどう考えたって間に合わないよ!部下をツブす気かよ!?」と悪態をつくようなレベルでもノーとは言わないのです。

 

「作業量としてはアソシエイト3時間 + アナリスト5時間分ってところか。

今夜は30時に帰る予定だったけど、俺が1時間残ってガッツリディレクションすればアソ2時間 + アナ3時間で終わるだろう。

並行して進めてる別件は一旦作業止めさせて、こちら優先で今夜中にファイナライズすれば両方間に合う。余裕だな」

 

くらいの感覚なのでしょう。

もちろんボスがポンコツの場合は話が別です。

要求に合理性がない場合は毅然とした態度で臨みます。

6. 苦しい場面で「シビれる」と笑う

追い込まれれば追い込まれるほど、エースバンカーはニヤニヤと不敵な笑みをしていました。

  • 案件でパンパンにもかかわらず、ボスが更に別案件にアサインしてきたとき
  • クライアントが突然宗旨替えをしたとき
  • 取れそうだった提案だったのにクライアントがビューコン(beauty contest)をやると言い出したとき
  • カツカツのリソースの中で部下が突然退職したいと言い出したとき、などなど

 

どんなに暗澹(あんたん)たる状況でも、エースバンカーを中心にしてチームメンバーでジョークや軽口を叩き合い、「シビれるわーw」と笑いながら仕事をしていたのがとても印象的でした。

(尋常じゃないタスクを抱えながらも笑えるとか、マジで頭おかしいんじゃないかと当時思っていました)

■当時:頭おかしいんじゃないか?(疑問) ⇒ 今:頭おかしい!(断定)、ビズリーチ!

7. 普段の仕事の振り方は悪魔に見えるが、実はボスから身を呈して部下を守っている

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エースバンカーを上司に持つと、ただでさえ過酷な生活が更に悪化し、絶望的な生活習慣を送ることになります。

毎分増え続ける未読メールと膨れ上がるタスクの量に目まいを覚えながら、1秒でも早く出さなければ詰められるというプレッシャーに戦々恐々としつつ仕事をしなければ、とうてい彼らのスピードに食らいついていけません。

「休憩したい?キーボード叩きながら休めばいいじゃないか」と言わんばかりです(実際は言ってない)。

 

そういう状況ですので、部下としてはいくら優秀なバンカーの下に就けたと言ってもこれじゃぁたまったものではありません。

ヒトの形をした悪魔にしか見えず、誰か今すぐ退治してくれないかと願う日々です。

 

しかし、多少投資銀行にも慣れてきて、徐々にその作法がわかってくると、エースバンカーがボスとの間で巧みにタスクのクオンティティーコントロールをしていることに気づきます。

「工数の割に期待する結果の出なさそうな筋の悪い分析はやめておいて、代わりにこちらのレポートを挿入しましょう」とか、「○○についてはフルスクラッチで作るのではなく、一旦ロンドンに依頼してみます」とか。

 

チームのアベイラビリティを限界まで引き出す一方で、メンバーが潰れてしまうような一線は絶対に超えません。

ボスは案件のことしか見えていないことも多いので、このあたりの統制はエースバンカーの腕の見せ所な訳です。

メンバーを潰す時点でエースではありませんから。

 

ただ、こういった打ち合わせはボスの部屋ですることも多く、下っ端のバンカーにはなかなか見えません。

憎まれ役になりやすい構造だということにようやく気づいたのは、一緒に仕事をしはじめて何年も経ってからでした。

 

また、案件がひと段落したら部下に有給を取らせて「1週間有給とって海外にでも行ってこい。仕事のことは気にするな、こちらで処理する。BBも日本に置いていけよ」と笑って送り出してくれます。

(なお、本人は休むことなく、部下の仕事も抱えて、涼しい顔で次の案件に取り掛かります)

 

一面だけを切り取れば部下をボロ雑巾のように使い倒す悪魔ですが、その実、誰よりも良いディールにしたいと願っているのがエースバンカーなのです。

最後に

いかがでしたか?

私見が多分に含まれているので、異論反論は認めます。

ただ、少なくとも私が知る限りにおいて投資銀行でのエースバンカーは確実に頭のネジが何本か外れていると思っています。

周りのバンカーですら寝てないんじゃないかと疑うくらいに仕事をしていたり、追い込まれれば追い込まれるほどアドレナリンが出てニヤけたり。

 

ですが、そういうエースバンカーが投資銀行を支えているといってもまったく過言ではありません。

実際、上司・部下・他部署から非常に高い評価・信頼を得ていますし、成果に見合う報酬として普通のバンカーよりはるかに多額の年収も得ています。

投資銀行にとってそういう人材をいかに転職市場から獲得し、社内に留まってもらうかが重要な人材戦略になっているのです。

 

もしもあなたが奇特な人で、実際にネジの外れた人間を目にしたくなったら、あるいは自分のネジを外せる場所を求めていたとしたら、外資系投資銀行の扉を叩いてみるのも良いかもしれませんね。