2018年2月14日更新 2017年3月31日公開
外資系投資銀行ついて、その高給さ激務さなどなど、様々な記事で説明してきました。
今回は投資銀行の普段の仕事ぶりについて説明していきたいと思います!
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投資銀行部門は財務のコンサルタント
投資銀行部門のおさらいです。
投資銀行部門は、大企業に対して財務上の各種専門アドバイスをする仕事でした。
要は「企業がM&Aや資金調達をしようと思っても普段やり慣れていないので出来ないでしょうから、我々がアドバイスするよ」ということです。
どういう手段でいくら調達しようか、どこをいくらで買収しようか、株価を上げるには何をすれば良いか、などなどコーポレートファイナンスや法律、会計、金融市場を熟知している俺たちを頼りなよ、そういうことです。
あやふやな方はこちらの記事をお読みください。
投資銀行部門は大きく「カバレッジ」と「プロダクト」のチームに分かれる
投資銀行部門は、大別してカバレッジと呼ばれるグループとプロダクトと呼ばれるグループに分かれます。
人数比は7:3くらいで、カバレッジの方が多いです。
カバレッジ
カバレッジバンカーとは、業界ごとに顧客を担当するバンカーのことです。
企業の窓口となるバンカーのことです。
クライアントに日参して様々な案件を提案し、ディールを獲ってくるのはこの人たちです。
要するに「営業」と思っていただいて差し支えありません。
カバレッジバンカーは形のある商品を売るのではなく、形のないアイデアを売り込むので自分以外の能力を頼ることができません。
バンカーは分析力・提案力・実行力を極限まで研ぎ澄まし、世界中の最高レベルの頭脳がひしめくこの業界で、自分の能力のみを武器としてシノギを削っているのです。
これが「最強の営業職」と呼ばれる所以です。
カバレッジグループは業界ごとに分かれていると言いましたが、例えば
- TMT:通信業界・メディア業界等を担当(テレコム・メディア・テクノロジー・グループ)
- FIG:金融業界を担当(フィナンシャル・インダストリー・グループ)
- GIG:一般消費財や重厚長大の製造業を担当(ジェネラル・インダストリー・グループ)
- PBI:公共セクターを担当
などがあります。
カバレッジバンカーは提案活動がメインと言っても過言ではありません。
市況が悪かったり提案力が弱いと案件化まではなかなか辿り着けません。
提案して提案して提案して提案して、運が良ければディールになる。
そんな状態ですので1年間提案活動しかしなかった、案件の経験を積めなかった、なんていうことは珍しくありません。
ちなみに提案資料のことを「ピッチ」、ピッチを持って営業しにいくことを「ピッチする」と言いますので覚えておきましょう。
プロダクト
プロダクトグループは、カバレッジバンカーが獲ってきたディールについて具体的に商品設計・実行する部隊になります。
買収スキームを構築(現金取得なのか株式交換なのか、など)したり、相手との交渉から書類の作成まで行います。
この辺りはもちろんカバレッジバンカーもガッツリ入りますが、過去案件の事例や実行可能性などを豊富に持っているのはプロダクトバンカーなので、両者がうまく協業しながら案件を進めていきます。
プロダクトグループとしては、エクイティファイナンス(株式での資金調達)を扱うECM(Equity Capital Market)、デット(債券での資金調達)を扱うDCM(Debt Capital Market)、買収・合併を扱うM&Aに分かれます。前者のECMとDCMを合わせて資本市場部とも言います。
また、各プロダクトグループはカバレッジと違い、業界ごとに区分されてはいません。
どちらかというと案件サイズであったり、日本企業同士の買収なのかクロスボーダー案件なのかといった分け方がされているケースが多いです。
ポジション毎の役割
投資銀行部門では大別してバンカーは2種類に分けられます。
収益責任を負うシニアバンカー(ヴァイスプレシデント以上)と、収益責任を負わずにアウトプットで評価されるジュニアバンカー(アソシエイト、アナリスト)です。
【オフィサー(=シニアバンカー)】
シニアバンカーは案件を獲得してくることが期待されており、人事評価上もいくら会社に利益をもたらしたかで報酬が決まります。
インセンティブ部分がメインとなっており、だからこそ徹底的にジュニアを働かせて資料を作らせて、クライアントに提案をしまくるのです。
【ジュニアバンカー】
ジュニアバンカーは案件獲得のための提案資料の作成を担当し、ディールが取れたらそのエクセキューション(=案件執行)をオフィサーと共に行います。
エグゼキューションフェーズでの役割分担は、シニアバンカーが交渉事や全体のプロジェクト管理を担当し、ジュニアバンカーがその指示に基づいて実際の作業や執務を行います。
ポジションを詳しくみてみよう
【Managing Director(マネジング・ディレクター)】
通称MD(エムディー)。1番偉い人。天上人です。
MDの中でももう一段階級があって、一握りのMDのなかでもさらに一握りがシニア・マネジング・ディレクターとなります。
シニアMDが各セクターにおける部長ということになります。(金融セクターの部長とか)
平MD(シニアMDではないMD)は部長ではないのですが、採用の最終ジャッジ権や予算の責任も負っているなど、日系企業の部長クラスと遜色ないとお考えください。
【Director(ディレクター)】
ヒエラルキーの2番目に偉い人。
Executive Directorと名乗るファームもあります。
投資銀行暦は最短でも10年選手。
MDまで後一歩なんだけど、その一歩がとてつもなく遠い!
そんな苦悩が見える人たちです。
日本企業では次長ぐらいを指します。
【Vice President(ヴァイス・プレジデント)】
通称VP(ブイピー)。
異業種の人に「ヴァイス・プレジデント」と名乗ると決まって驚かれます。
しかし、そのまま日本語に訳すと「副社長」ですがそこまで偉くなく、日本企業で言えば課長ぐらい。
VP以上がオフィス内で個室を持てるため「オフィサー」と呼ばれており、クライアントを直接持つのもここからです。
【Associate(アソシエイト)】
海外だとMBA卒業生が投資銀行に入社すると、このタイトルから始まります。
日本ではMBAホルダーが少ないので、アナリストから昇格するケースが圧倒的に多いです。
「投資銀行残酷日記」の読者ならよく分かると思いますが、アナリストと同様、アソシエイトもソルジャー要員(奴隷)です。
オリジネーション(提案活動)はアソシエイトが中心となってアナリストを統制し、進めることが多いです。
【Analyst(アナリスト)】
ヒエラルキーの最下層に位置するタイトル。
オリジネーション(案件の提案)にむけて、データの収集や加工、分析、プレゼンテーション資料の作成、その他雑務を一手に担います。
高学歴のなかでも飛びぬけて優秀な学生が毎年入社してきますが、3年と持たないのがこのアナリスト。
3年目を節目にアソシエイトに昇格すると給料がドンッと増えるので、カネの誘惑という麻薬を打ち続けて徹夜で資料と格闘しています。
現場の仕事の8割は資料作成の時間
ここからは実際のバンカーの仕事現場を解説していきます。
カバレッジバンカーの8割はクライアントへの提案活動ですので、その部分にクローズアップしました。
まずは提案の骨子を決める
何はともあれ、まずはどの企業にどういった提案をするかを決めます。
めちゃくちゃたくさんあるのですが、例えば下記のようなものです。
- 資本構成のリバランスに関するディスカッション
- 既存の資金調達分のリファイナンス
- M&Aの提案
- 競合各社の決算総まとめ
例えばこの中で「M&Aの提案」と一言で言っても、どの程度検討が進んでいるかによって当然提案する内容も変わってきます。
まったくアイデアがなくてちょっとでも可能性のある買収候補企業を洗い出して欲しいというステージか、だいぶ検討が進んでいて数社に絞れているのでどうアプローチしましょうかというステージなのか、などなど。
したがって、その企業の状況に合わせて完全オーダーメイドの提案資料を作ることになりますので、この段階で大枠の方針をすり合わせます。
基本的にはオフィサーが方向性を決めますので、提案の方針や注意する点、分析の切り口、スケジュール感などをジュニアと共有・ディスカッションするイメージです。
ピッチ(=営業資料)を作る
提案の骨子が決まったところで、実際に作成フェーズに入ります。
作成は基本的にジュニアが行い、オフィサーは最終的なクオリティをチェックするという役割分担です。
また、ジュニアの間でもアソシエイトが資料作成の実務上のリーダーになります。
アソシエイトが、誰がどのスライドを担当するかを決め、進捗管理や相談窓口になります。
営業資料のことを投資銀行ではピッチブック、もしくはピッチと呼び、高級紙に高いインク、1up印刷、さらにはプラスチック製の表紙が付いて、章ごとにタブまで挿入される徹底振り。
とっても豪奢に作成されます。
あまりに豪華なので、体言止めで短いフレーズを書くだけで、さも深い深いインプリメンテーションがあるように感じさせられるのです!(効果のほどは分かりませんが、バンカーは皆そう思っています)
ちなみに製本作業はバンカーはしません。
製本のためだけの部隊が社内にお抱えでいて、パワポのデータを送りさえすれば24時間体制で対応してくれます。
このように外面を大層気にしていますが、なんと中身にはそれ以上のこだわりが偏執的に詰め込まれています。
オフィサーのエゴの塊と言っても過言ではありません。
- フォントサイズを0.5ポイント単位で指示
- 図表や自社ロゴなどは1ピクセル単位で位置を指示
- ワーディングは3回でも5回でも、納得いくまで徹底的に書き直させる
- 何をツッコまれても良いように6ポイントの極小サイズで注釈をたくさん書かせる
- 信頼できるソースかどうか、情報の出所を徹底的に調べさせる
などなど枚挙に暇がありません。
こんなことをアポの出発10秒前までやっています。
軽い提案だから早く完成するなんていうことはなく、どんな資料作成でも時間いっぱいまで推敲している(させられている)という状態です。
時間ギリギリにオフィサーのOKが出て(もっと磨きたいがしぶしぶOKする感じ)ようやく製本に回します。
オフィサーはアポに向かうために先にエントランス前でタクシーを止めて待っていて、冷や汗を流しながら製本部に「急いでください」と伝えます。
製本が完了したらガーーーーーーっと確認して、問題なければピッチの束を抱えてエントランスにダッシュ。
オフィサーに渡して完了です。
しかしまだ終わりません。
アポイント直前までオフィサーは資料をチェックしていて、気になった箇所や数字の整合性の確認を容赦なく入れてきますので、それに即レスしなければならないのです。
アポの時間になったらジュニアバンカーはようやく一息です。
ピッチし(=営業)に行く
ジュニアが作った資料を持って、オフィサーは担当企業へプレゼンをしに行きます。
プレゼンにはアソシエイトも同行することが多いです。
資料を作る上での細かい数字や注釈を完全に把握しているのはアソシエイトですので、クライアントからの問い合わせに瞬時に対応するためです。
ここで即答できるかどうかで信頼度が変わってきますので、メインスピーカーではないからといって一瞬たりとも気を抜けません。
さて、ピッチの現場というのは、ジュニアにとってとても勉強になる実戦教育の現場です。
将来ジュニアからオフィサーになったとき、どのようにプレゼンをすれば良いかはこの瞬間にしか学べないのです。
案件をたくさんとる優秀なオフィサーとそうではないオフィサーではやはり巧拙が出てきますので違いは何なのか、どうすれば近づけるのかを盗むチャンスとしなければなりません。
優秀なオフィサーのプレゼンは、出会いがしらの挨拶 → アイスブレイク → 本題への入り方→話の展開→提案までが滑らかでよどみなく、疑問を抱かせず、スッと頭に入ってくるものです。
言葉のチョイスや表情、間の取り方、姿勢、適度な会話のキャッチボールなど、いちいち非常に洗練されているのです。
ディールが獲れたらプロダクトチームと協業する
無事案件が取れたら、実際に形にすべく専門部署と協同して進めていくことになります。
ファイナンス関連ならECMもしくはDCMを、M&A関連ならM&Aチームをアサインしてプロジェクトチームを編成します。
基本的には引き続きカバレッジバンカーが窓口となり、クライアントの要望やto do管理、交渉などを担当し、どういった経済条件で株や債権を設計するかや、どういうスキームでM&Aを行うのがベストかといった部分をプロダクトチーム主導で検討します。
案件が始まればカバレッジから、プロダクトから、クライアントから、閑々諤々のディスカッションがメールで飛んでくるためテンヤワンヤになります。
トイレに行っている間であろうと自宅で深夜に寝床に付いたときであろうと、時間と場所に関係なく社用携帯が鳴り続きます。
案件中は食事や睡眠が満足にとれなくなる期間が数ヶ月続きますので、どこからともなく殺意が湧くほどの極限状態になることもあります。
しかし、それを乗り越えて案件が成功したときの達成感たるや、そうそう体験できるものではありません。
おわりに
投資銀行部門(IBD)の普段の仕事を説明してみましたが、いかがだったでしょうか?
程度は極端だけど案外やっていることは普通なことなんだな、ということがお分かりいただけたと思います。
そうなんです、どこでもやっているような提案などを極端に多く・速くやっているだけなんです。
少しでも親近感を持ってもらえてば幸いです。
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