外資系投資銀行への道標

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転職前に知っておきたい外資系投資銀行のあるある13選

2018年2月14日更新 2016年11月29日公開

投資銀行では万事が極端で、とてもユニークな業界です。

バンカーが同窓会や合コンに行こうものなら、耳を疑うような光景を常識として考えて生きていることに度々驚かれます。

ということで、筆者が外資系投資銀行を辞めてから「そういえばあれは普通じゃなかったよな」と思うものを書き出してみました。

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その1. 3年勤めると同期がいない

入社3年で同期がほとんどいなくなる、そんな状況も珍しくないのが外資系投資銀行です。

筆者は新卒で外資系投資銀行に入社しました。

業務は肉体的・精神的にキツかったですが、仕事自体が楽しかったこと、この業界しか知らなかったために社会人なら当たり前なんだと勘違いしていたことで、なんとか3年目を終える事ができました。

 

ところが、改めて回りを見渡してみると、

同期が3人しかいない!?全部で10人以上いたのに!?

そんな状況でした。

 

一番多いのは、さらに良い条件を提示した別の投資銀行に転職するケースです。

特に3年目が終わるタイミングというのは、ハイハイのアナリストからヨチヨチ歩きのアソシエイトへと昇進する節目の年が多いです。

このタイミングでなんとなく昇進が難しいという空気感を悟ったジュニアバンカーは他社へ転職してしまうことも多いのです。

 

去就関係で一番驚かれるのは、大学4年生のときに新卒採用で面接官やメンターとしてお世話になったバンカーが、大学を卒業して入社する頃には転職してしまっていてもう会社にはいなかった、というウソのようなホントの話です。

その2. キーボードが穴だらけ

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投資銀行ではエクセルとパワーポイントを変態的に多用します。

間違いなくどの業界よりも上手く扱っている自負がありますし、ひょっとしたらマイクロソフトの開発メンバーよりも使い倒しているのではないか、なんてひっそりと思っています。

 

そんなエクセルワークですが、「1秒の短縮にこだわれ」と叩き込まれるため、作業時間を削るためにあらゆる努力をしています。

そのひとつとして、誤操作をなくすために不要なキーボードを外すということをしています。

 

筆者の場合では「F1」から始まって「Insert」や「Num Lock」など計11個のキーを外して作業しています。

「F6」や「かな」についてはバンカーによって好みが分かれるところで、その人の流儀がキーボードに現れます。

ただ、どのバンカーも10個前後は外しています。

転職してからは、初めて私のデスクを見た人に必ず驚かれたものです。

「壊したのですか?」と笑。

 

ちなみにキーを外すのはとても簡単で、キーとキーの間に10円玉を挟んでテコの原理で上に押し上げるとパチッと外れてくれます。

外したキーは失くさないように引き出しに保管しています。

その3. ブラックベリーを抱いて寝ろ

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ジュニアバンカーに自由はありません。

合コンのときも、結納のときも、法事のときも、旅行中でも、寝ているときも、オフィスのトイレにいるときでさえ、緊急招集がかかるため気が休まる事はありません。

 

そんなジュニアバンカーの自由を拘束する悪魔のツールが社用携帯のBlackberry、通称BBです。

アメリカの議会や大統領も愛用するBBは、そのセキュリティの高さや物理キーボードの使い勝手、エクセルやパワポが見られるといったところから投資銀行業界でもグローバルの標準装備として支給されます。

日本では一般に利用している人はほぼおらず、見かける事は皆無といってもよいでしょう。

そのため街中でBBを使っている人を見かけたらまず間違いなくバンカーか外資系コンサルの可能性が高いです。

全く知らない人にも関わらず、なぜか親近感を感じてしまう瞬間です。

 

バンカーはそのBBを肌身離さず身につけていなければなりません。

久しぶりの休日だろうと、ポケットでBBがブルッとしたら全身が強張り、緊張します。

中でも悲惨なのが、彼女との旅行当日に空港で案件がとれた。キックオフMTGするから○○時に出社するようにと連絡が入ったときです。

最初は呆然とし、次にガックリと肩を落とし、最後には「キャンセル代を全額会社に請求してやる!」と憤怒の表情で帰社することになりました。

 

このようにBBによって呼び出しがしょっちゅうありますから、寝ているときでさえすぐに返答できるようポケットに入れたり、頭の下に入れて寝るジュニアバンカーが多いです。

BBが配布されてすぐに上司から「毎晩BBを抱いて寝ろ」と言われて戦慄したのは良い思い出です。

その4. オフィスから歩いて帰られる場所に住む

ジュニアのうちは如何なるときもオフィスに即座に駆けつけなくてはならない宿命であることは上述しました。

したがって、BBで呼び出しがあったらすぐに駆けつけられるよう、オフィスの近くに住むことは暗黙の了解となっています。

あとは単純に、1分でも早くベッドに入りたいという理由もありますが。

 

オフィスが六本木ヒルズの場合はヒルズ内のレジデンスを含む六本木や麻布十番あたりが多く、オフィスが東京駅付近の場合は銀座や神田が多いです。

アナリストのオフィスまでの目安はドア to ドアで10分~15分程度です。

いずれも平均的な賃料から考えると何倍もするくらい高い賃貸価格ですが、それでも手取りでみたら1/3ほどで収まるので生活に苦労するという事はまずありません(そのための高給とも言えますが)。

 

なお、オフィスからの距離はタイトルが上がるにつれて遠くなる傾向にあります。

タイトルが上がれば指示出しがメインになってきますので、ジュニアのように即座に駆けつける必要がなくなるためです。

その分、家族と過ごしやすい都内の高級住宅街に住むのです。

その5. 朝晩タクシー通勤

ジュニアのうちは終電のある時間帯に帰宅できることはまずありません。

投資銀行では終電後のタクシー代は全額支給されることになっており、必然的に毎晩タクシーで帰ることになります。

 

最初の頃は朝電車でオフィスに向かっていたのですが、しばらくして朝は1分でも長く寝ていたいと思うようになり、結局半年ほどで電車通勤は諦めて朝もタクシーで通うようになります。

もちろん自腹ですが、給料からしたら微々たるものだったので「時間を買っているんだ...」と自分に言い訳をしているうちにそれが当たり前になってしまうのです。

 

家探しをしているジュニアバンカーには大きなアドバイスがあります。

それは、「タクシーの捕まりやすい大通りに面した物件」にすること。

 

…え?そんなに近いと道路の音が気になる?

 

大丈夫、聞こえないくらい上層階に住めば良いのです(ニッコリ

その6. 25時に帰ろうとすると「今日は早上がり?」と聞かれる

投資銀行の夜は不夜城と言われます。

ジュニアは基本的に9時〜27時で働いています。

翌朝がアポだったりすると作業は朝まで続きます。

 

何がそんなに仕事あるんだと他業界の同級生からよく聞かれますが、バンカー自身でさえなぜこんなにタスクがあるのか良くわかっていません。

一つ一つタスクを挙げても重さはピンからキリまであるのですが、その数が尋常ではないくらい多いのです。

もはやそうとしか表現ができません。

 

そういった状況ですので、25時に帰られるのは月に数回という程度です。

ウキウキと帰り支度もそこそこに退社しようとすると、同期から「今日はもう上がり?早いね。おつかれー」なんていう会話があります。

一転、突然翌日のアポがリスケになって22時に帰ろうものなら「何をして良いかわからない…」とこぼすような状況です。

可哀想すぎて涙が出ます。

その7. 寝ながら歩く

バンカーは常に睡眠を欲しています。

どうやったら日常の中で睡眠時間を確保できるだろうか、という永遠の命題について知恵を絞っています。

中でもよくやるのがトイレの個室で寝ること。

トイレットペーパーホルダーがちょうど良い高さにあるため、そこに上半身と顔を預けて寝るのです。

10分もすれば体制が苦しくなってきて自然と目が覚めます。

思考はクリア、オーケー大丈夫、後半戦まだやれる。

 

睡眠にまつわる究極のライフハックはズバリ!歩きながら寝ることでしょう。

どういうことかというと、通勤中、まず50メートル先までの安全を確認します。

そして目をつぶって歩きます。

およそ50メートル歩いたら目を開ける。

これを繰り返すのです。

疲れが取れたかどうか正直定かではないですが、少なくとも目を開けていられる状態にないのでもうどうしようもありませんでした。

私は幸運にも人様を傷つけたことはありませんが、みなさんは絶対に真似しないでください。(真似するわけない?)

その8. プレゼン中にクライアントの目の前で寝る

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ジュニアバンカーなら誰しもが一度は経験するのがこれ、クライアントの目の前で寝てしまうという最悪の失態です。

私もありました。

直前まで寝ないで資料を作っていたのです。

おそらく直近7日間の睡眠時間は合計15時間を切っていたときでした。

 

最初はクライアントを前にしての緊張からシャキッとしているのですが、空調の効いた室内で30分も経つと、隣で読経のようなプレゼンをしている上司の声が次第に遠くなってくるのです。

意識を根こそぎ持っていかれそうになる自分に気づいて、必死に手の甲をつねったり口の中で舌を噛んだりして抗うのですが、溜まりに溜まった睡眠欲求という生理現象は到底止められるレベルではなく、意識は泥沼の中に引きずり込まれていくのです。

当然そのミーティングの記憶もありません。

 

クライアントには完全にバレていたはずですが、不幸中の幸いにも上司は資料の読経に夢中で私の失態には気づいていなかったようです。

本当に命拾いしました。

クライアントは気づかないフリをしてくれていたのでしょう、今でも思い出すと申し訳なく思います。

その9. 目は充血させておけ

ボスのために忠実に作っていた資料が完成し、腫れぼったい目をしてボスの部屋へ持って行った時のこと。

ボスは私にこう言いました。

 

今から君をアポに同行させるが、目はそのまま充血させておけ。

クライアントはその目を見て、如何にこの資料に心血が注がれているかを理解するんだ。

 

ええ、もう心が震えましたね(白目)

その10. 予定時刻に店に着いても誰もいない

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それほど多くはありませんが、投資銀行でも部の飲み会はあります。

歓迎会や送別会、案件の打ち上げ、プロモーションのお祝いなどです。

ジュニアからすればそんな時間があるなら寝たいというのが本音なのですが、ボスが仕切る手前出席するほか仕方がありません。

 

その際、ジュニアの処世術として如何に自分の稼働が限界に近いかをアピールし、なるべく早く切り上げられるように仕向けなくてはなりません。

そう、忙しいフリをするのです。

他部署との打ち合わせを飲み会に少し被るように設定してみたり、週次の稼働状況の報告では実際より1.5倍くらいの時間で申告してみたり。

その結果、ジュニアが全員時間通りに店に到着するということはなく、ボスたちが飲んでいるうちにジュニアが次第に到着するということになります。

 

ボスもその状況を知ってか知らずか、時間通りにどうしても着席したくなるように超高級店を予約するようになります(実際の予約は秘書ですが)。

さすがに高い肉やお酒が飲めるのならと、定刻通りにきっちり仕事を片付けるようになるのですから何ともゲンキンな人たちですね。

その11. 残業時間を語る同級生に厳しくなる

同級生が集まる飲みの席ではやっぱり会社の話題が挙がります。

その中でも特によく出てくるのが 残業の話です。

ミサワではないですが、やはりどの界隈でも残業は気になる模様です。

ただ、バンカーの前では残業時間の愚痴は禁句です。

 

A:「先月は残業80時間あってさ」

B:「うわー、そりゃブラックだね」

A:「趣味に割ける時間もないんだよねー」

B:「大変そうだね」

A:「昨日は実質3時間しか寝てないからつれーわー」

 

そんな会話をよく耳にしますが、バンカーにはそれがピンとこないのです。

月80時間なんて、投資銀行なら折り返し地点にも届かないじゃないか。

なのに時間がないとはどういうことなのか。

単に趣味より睡眠を優先しているだけではないのか。

であれば睡眠時間のうち3時間を趣味に回せば解決じゃないか?

多分だけど、一昨日は6時間くらい寝てるんでしょ、きっと。寝すぎだよね。

 

そういう思考回路なのです。

長くこの業界にいると上記のような“こじらせた”人になってしまうので注意が必要です。

気づいて欲しい、あなた自身がミサワになっているということに!

その12. 宅配ボックスがないと宅配が一切受け取れない

 投資銀行で働いているとある日気づきます。

「あれ?宅配受け取れなくね?」

そうです、宅配を受け取れる時間に在宅していることがないのです。

 

なんとか土日のどちらか午前に受け取れるという感じでしょうか。

せっかくお急ぎ便で頼んでも無駄。

実家の母が時間指定でお米を送ってくれても無駄。

気付いたら保管期限が過ぎていて、いつの間にか返送されていたということも度々ありました。

 

そういう状況なので、新たにバンカーとなる人は是非とも宅配ボックスが設置されている家を選ぶようにしましょう。

その13. 海外研修が夏休み

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投資銀行では、新卒のときとアソシエイトへプロモーションしたタイミングで海外研修に行くことになっています。

それぞれアナ研とアソ研と呼ばれており、ニューヨークもしくはロンドンで約1ヶ月間滞在し、世界中の同期と膝を突き合わせて研修をすることになります。

 

その研修では財務や会計、モデリングの授業やディスカッションの時間があるのですが、だいたい17時か18時には終わり、あとはフリーとなります。

また、「ネットワーキングデイ」と称した授業のない日もありました。

その日は会社が近くのBARを貸し切っていて、そこで世界中の同期のバンカーと飲んで喋って、ただ親交を深めるためだけの日です。

 

私はニューヨークだったので研修後にみんなでブロードウェイを見に行ったり、一切れ3万円以上もするステーキをたらふく食べたり、高級スーツを買いに5番街にいったり、ややいかがわしいクラブで踊ったりと大変満喫しました。

また休日には飛行機に乗ってナイアガラの滝を観光したり、ワシントンの博物館に行ったり、フロリダのディズニーワールドに行ったりと、それぞれの楽しみ方でニューヨークをエンジョイしていました。

研修であった様々なハプニングや楽しかったイベントはまた別の機会に記事にできればと思っています。

 

ただ、東京の現場では研修中にひとり抜けた穴を残りのメンバーでカバーしなければならず、負荷は25%増しのような状況です。

したがって研修から帰ってくると、

 

「も う  十 分 休 ん だ ろ ?」

 

という空気がボスからも後輩からもひしひしと感じることになり、針のムシロに座っているような体験をします。

帰国後は顔だけでも引き締めて、くれぐれも浮かれ過ぎて反感を買わないよう注意しましょう。

最後に:命をお金に換えて働いた者にしか見られない景色

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いかがでしたでしょうか。

当時はごくごく当たり前に思っていましたが、思い出すとなかなかパンチの効いた日常を送っていたことに私自身改めて気付きました。

 

投資銀行では商品という商品を持っておらず、クライアントに提出する資料が自分たちの最大の武器となります。

それが全てです。

資産が収益を生む世界ではないので、生き残るためには日々頭をフル回転させて猛烈にアウトプットを出し続けなければなりません。

その結果として、常識ではちょっと考えられないようなカルチャーを生むことになります。

それを「絶対無理だ!」ととらえるか「なんて面白そうなんだ!」ととらえるかで、数年後あなたが見る景色はまったく違ったものになることでしょう。

 

もしも読者の中に、命を換えて働いた人間にしか見えない景色を見たいと思ってしまった人がいたら、覚悟をもって挑戦してみるのも面白いのではないでしょうか。

大丈夫、途中で失敗しても、投資銀行でリングに立ち続けた経験は一生あなたを支える事でしょう。

 

なお、ここまで紹介してきたことは、すべて筆者が経験した実体験を元に書いております。

あくまでも投資銀行の一面に過ぎませんし、外資系投資銀行には抜群に優秀でしかもタフ、たまに空気が読めない豪気で魅力的な人間が揃っているということを最後にちょろっとだけフォローして、本記事を締めたいと思います。