2018年2月14日更新 2017年8月18日公開
突然ですが、経営企画って本当に必要な部署なのでしょうか?
こうしたブログを運営していたり、私自身いまは経営企画に所属しておりますので、経営者が経営企画をうまく使えていないというような話を良く耳にします。
うまく使えていないということは、その経営者にとって経営企画はそれほど大切な部署ではないと言うことです。
ということで、経営企画の必要な会社ってどんな会社なのか、どうすれば経営企画は実力を発揮できるのか、私なりに考えてみました。
お役に立てれば幸いです。
- 経営企画部は必要か?
- 経営企画をきちんと機能させようとするとそれなりに頭数が必要
- 経営企画は組織の持続性・連続性が求められる
- 経営企画部を厚く組織できているかが競争力に直結する
- まとめ:企業のフェーズによってはニーズはあるけど、要件を満たしてなければ要らない子
- 最後に
経営企画部は必要か?
経営企画部って本当に必要な部署なのでしょうか?
そもそも外資系企業に経営企画部という組織はほとんどありません。
外資では、M&AなどはCEOが主導する最重要戦略事項のため、CEOを頂点として実務はCOOが担当しているケースが多いです。
一方で、日本では社長室や経営企画部という形で社長直下のチームが組織されるケースが多くなります。
私は、経営企画部の重要性は企業のステージによると考えています。
創業期・成長期
事業部の成長が著しい時期、例えば、放っといても2桁成長しているようなとき、会社は事業部ドリブンで進みます。
社内のヒト・モノ・カネのリソースを稼ぎ頭の事業部に突っ込んで、ガンガン伸ばしていこうとしているステージです。
この時期の経営企画部な、事業部がそのリソースを十二分に活用して伸ばしていけるよう全方位で補佐をする役割が求められます。
すなわち、主な仕事は経営管理や予算作成、リソース配分の決定といった、大事だけれでも地味で黒子的な役回り、要は調整役です。
この時期は事業部の頑張り次第で業績がぐんぐん伸びるので、相対的に経営企画部の重要性は低くなります。
成熟期・衰退期
一方、事業部のサービスがシェアを取り、成熟期を迎え始めるとタイミングで状況は一転します。
具体的には、株式アナリストから
「第2の事業の柱の登場が待ち望まれる」
とか、
「成長に陰りが見え始め、株価上昇のカタルシスが低下している」
などといったことを書かれ出す頃です。
このようにオーガニック成長の限界がささやかれ始めると、次の成長ステージに乗せるために海外展開や新規事業領域への積極的な投資、それからM&Aによる外部成長の取り込みが重要となってきます。
このうち、まず海外展開や新規事業開発に取り組むことが多いのですが、いずれも自社で成功させるのは相当難易度が高いのが実情です。
ごく一部で成功しているように見える企業でも、その裏には大量の屍の山が積みあがっています。
そうなると、海外展開やM&Aを取り扱う経営企画部の出番です。
上述の創業期や成長期とは一転し、経営企画部の重要性が格段に上がります。
事業部の収益やキャッシュフローを最大化するために経営企画部が補佐するという役割は薄れ、経営企画部ドリブンで買収等を仕掛けるなど、事業部では出来ない企業価値の上げ方を実践することが期待されるようになります。
このタイミングで経営企画部が厚く組織されていることが、企業価値の持続的成長に向けて大変肝要になります。
経営企画をきちんと機能させようとするとそれなりに頭数が必要
上述の通り、企業が成熟すると経営企画は事業部で取り扱えない種類の企業価値の向上施策に取り組むことになります。
例えば、
- グループの事業ポートフォリオを整理してリソースの再分配を行う
- M&Aによってグループの収益を増やす
- 中期経営計画を取りまとめて発表する
- 成長フェーズに合った組織体制案を作って実施する
これらは施策のうちのごくごく一部です。
ときには組織を超えて施策を実施したり、部署横断のタスクフォースを組織して陣頭指揮を経営企画がとったりします。
例えば人事制度を見直したり、最適資本構成について調査したり。
つまり、やらなきゃいけない施策はいくらでもあるので、それを担当できるだけの経営企画の頭数がそれなりに必要になるよ、ということです。
ですが実際は、経営企画の仕事をきちんと理解しているマネジメントは残念ながらそう多くありません。
そういう会社は経営企画に人を割かない傾向にあり、上場企業ですら社員1,000名規模にもかかわらず経営企画メンバーは2人とか3人しかいないということはよくあります。
転職する際は是非、経営企画のミッション・存在意義について会社の考えをきちんと聞いておかないと、意気揚々と経営企画に入社したのに、
人が少なくてまともにプロジェクトが出来ない!
人を増やしてもらおうにも経営陣から渋い顔をされる!
そもそも会社から求められている業務が大してない!
なんていう事態になりかねませんので要注意です。
経営企画は組織の持続性・連続性が求められる
経営企画に必要なのは頭数だけではありません。
組織としての持続性・連続性が他の部署以上に大切になってきます。
どういうことか説明しましょう。
例えば営業部員は転職して入社初日から仕事を始められます。
良く言うと「即戦力」、悪く言うと「いくらでも替えがきく」ということです。
一方で、経営企画のメンバーはスイッチングコストが大きくなります。
その違いは一体どこにあるのでしょうか。
答えは「職務遂行に必要な情報の連続性」にあります。
経営企画の担うプロジェクトは全社戦略に関わるものが多いです。
予算作成なり、M&Aなり、数ヶ月〜半年かかるようなプロジェクトも少なくありません。
そうしたプロジェクトを遂行するためにとても大事なのが、「社内の情報」です。
例えば、
過去に経営陣が何を発言したか
過去に類似案件は議論されたか、その結論はどうなったか
このプロジェクトのキーマンは誰で、案件への賛意はあるか
などです。
これらはいずれも長い期間をかけて経営企画部内に蓄積されていくものです。
経営企画にジョインした人がすぐに使えるわけではないのはこのためです。
いくら優秀な人でも経営企画にジョインしていきなり刺さる提案をしてクロジングまで持っていけるわけではありません。
そのような状態になるまで、最低数ヶ月〜半年は社内の情報をインプットする期間が必要になります。
逆に言うと、社内の動向や人について情報がどんどん入ってきて詳しいため、経営企画のメンバーの替えはききにくいということでもあるのですが。
このように、経営企画のメンバーには過去からの連続した情報を持っている必要がありますので、組織としてそれが蓄積される体制が整っていなければなりません。
つまり、
- 異動や転職するメンバーが少なく、経営企画部への定着率が高い
- 経営企画の誰かが辞めたら失われる情報がないように、他のメンバーにも情報が同期されている
といった点が重要になってきます。
経営企画部を厚く組織できているかが競争力に直結する
これまで見てきたように、頭数や組織の持続性の観点を含めて、経営企画が「厚い組織」であるということが企業の競争力につながります。
では、「厚く組織されている」強い経営企画像について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
まず確認ですが、経営企画部は経営陣と共に企業の将来を描き、それに向けて必要な策を講じる実務部隊です。
そうした前提でいくと、「組織が厚い」とは下記のような状態を表していると言えます。
人材面
- 十分なスキルと経験を持った人材が配置されている
- 多様なバックグラウンドの人材が配置されている
- 多数のプロジェクトをさばけるだけの十分な人数が配置されている
体制面
- (昇進を除く)異動や転職が少なく、経営企画への定着率が高い
- 誰かが欠けても他の誰かがカバーできるように情報が同期されている
ブランディング面
- 「経営企画メンバーは将来の経営陣候補」が絵空事ではなく、実例がある
- 経営企画部がエリート部署という社内ブランディングができていて、各事業部でとびきり優秀な人材を社内ヘッドハントできる土壌が醸成されている
いかがでしょう?
あなたの会社の経営企画は当てはまっていますか?
こうした状況を作り出せていると、優秀な人材が常に入ってきて、3〜5年で一通りの経営企画の専門的職務が遂行できるような組織になります。
そして、更に経験を積んだ中堅〜ベテランは執行役員やマネジメントに抜擢されたり、あるいは他社に引き抜かれて外部で活躍するようになります。
外部で活躍してくれたらそこと新規取引につながったり、提携やM&Aといった紹介話も出てくるかもしれませんよね。
そうした新陳代謝・エコシステムがうまく回り出すと、更に人が人を呼び、厚く強い組織となっていくのです。
まとめ:企業のフェーズによってはニーズはあるけど、要件を満たしてなければ要らない子
では結論に入りましょう。
まず、企業のフェーズによっては経営企画の機能が必要になります。
それは成熟・衰退フェーズです。
オーガニック成長では市場の期待に応えられなくなってくるにつれて、経営企画の必要性は増してきます。
しかし形だけ経営企画を作っても意味がありません。
必要な要件を満たさない限り、経営企画としての機能を発揮できません。
申し訳程度に2〜3人を置いただけでは大したプロジェクトはできません。
ということで、特に重要な要件はその頭数と、それから組織の持続性だということで結論付けました。
最後に
経営企画って本当に必要な部署なの?ということについてじっくりと考えてきましたが、いかがだったでしょうか?
私は現在経営企画に所属しておりますが、日々どのようにすればもっと部がよくなるか考えています。
今回は良い機会なので、せっかくの経営企画を埋もれさせないための啓蒙活動としてこの記事を書きました。
厚い経営企画が出来て戦略的に企業価値を高めていけるような企業が増えれば良いなと願っております。
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