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財務部の仕事をわかりやすく丁寧に解説【経理と何が違うの?】

2018年2月14日更新 2017年5月18日公開

財務部と聞いて、あなたはどのような仕事をイメージするでしょうか?

電卓を片手に、ひたすらレシートや領収書を計算したり、金庫のお金と帳簿のお金が一致しているか確認をするような仕事を想像しますか?

あるいは、「なんとか資金繰りを持たせられないのか!?この案件さえ受注できれば今月の返済ができるんだ!どうにかキャッシュが枯渇しないように回せないのか?次不渡りを出したらうちは倒産だぞ!」なんて言うシーンを想像された方もいらっしゃるかもしれません。

いずれも当たらずとも遠からずなのですが、個人的にはどうしても違和感を禁じえません。

「エリートになりたくば金流を押さえよ」が私の信条ですので、まさにその中心である財務部についてはもう少し洗練された(?)内容で解説できればと思っています。

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財務部の仕事内容とは

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早速具体的に財務部の業務内容について説明していきます。

財務部での主な業務をざっくり書くと、

  1. 財務戦略の策定と実行
  2. 監査法人対応
  3. 内部統制

になります。以下で詳しくみていきましょう。

その1. 財務戦略の策定と実行

財務戦略とは、いわゆるコーポレートファイナンスの分野のお話です。

財務戦略の観点から財務部の役割を3つ説明しましょう。

 

まず1つ目は、企業内の資金ニーズの把握です。

財務部は企業内における金銭の供給を統括管理する立場ですので、企業が安定成長するために、事業部が必要とする資金を血液のように企業内を滞りなく行き渡らせることが大変重要です。

財務部は、経営陣と経営企画部が作成した事業計画に基づいて、各事業部の資金ニーズを正確に把握している必要があります。

外部環境で成長が阻害されるならまだしも、財務のロジが稚拙で資金ショートするといったような、内部環境が成長を阻害する事態は絶対に回避しなければならないためです。

 

そして2点目ですが、資金ニーズを把握したら今度は実際に調達を実行します。

「貸してください、出資してください」といってすぐに集金ができるほど調達の世界は甘くはないので、綿密な調達プランを作成しなければなりません。

この段では、例えば調達手段の多様化や調達スケジュールの作成、調達力を維持・向上させるための金融機関との折衝などが業務内容になります。

 

そして3つめの役割は財務面からの企業価値の最大化を目指すことです。

企業価値を向上させるということを考えたとき、資金調達コストが最小になればキャッシュフローが増えて企業価値にもポジティブに作用します。

そのためにエクイティとデットの資本構成を見直したり、負債調達コストを下げるために金融機関と交渉するといった業務が必要になっていきます。

 

このような資金調達計画の策定や、資本コストの最小化を目指すこと等を指して「財務戦略」と呼びます。

その2. 監査法人対応

監査法人対応は、四半期ごとに財務部が作成した財務諸表を監査法人に監査してもらうときの対応業務を指します。

もしも期中に会計処理を変更したらその合理性を監査法人に説明しないといけませんし、監査法人のヒアリングに応えたり、必要な資料を提出したりしないといけません。

監査期間中は監査法人が会社の一室を丸々占領して缶詰状態で監査しますので、財務としてもフルコミットで対応する必要があります。

その3. 内部統制

内部統制とは、会社の経営目標を達成するために、社員全員が守らなければならないルールや仕組みのことをいいます。

とりわけ書類の承認や決裁に際して、不正の入り込む余地がないようなシステムを構築したりする業務です。

もう少し具体的に言うと、不正な外部取引が未然に防がれたり、虚偽の領収証が受理されない仕組みであったり、無茶な投資案が通らないようきちんと審議する仕組みを構築することなどが当てはまります。

「財務」と「経理」は役割が違う

混同されがちですが、「財務」と「経理」では役割が異なります。

この章では財務と経理の違いについて説明します。

 

両部の違いを簡単に申し上げると、経理は「企業内ですでに動いたお金の管理(決算書の作成)」であることに対して、財務は「これから動かすお金を管理すること」にあるという点です。

つまり、経理は日々の取引を記帳して決算に向けて財務諸表等を作成する仕事のことを指し、財務は会社全体のお金の流れを管理して、資金不足にならないように銀行や投資家からお金を借りてきたり、どういう調達が企業価値最大化にとってベストなのかを分析する仕事を指します。

 

企業規模が大きかったり、子会社がたくさんある会社の場合などは財務部と経理部が分離している場合が多いですし、単一事業を展開していて比較的シンプルな資金の流れの会社の場合などは財務経理部として一体となっているケースもあります。

このように財務と経理の業務は区別して扱われるものの、企業の金流を扱うという点では切っても切れない蜜月の関係にあります。

財務部での仕事例

では実際に財務部に転職(異動)したあと、具体的に何をどのように習得していけば良いものでしょうか?

 

まず配属されたら事業部単位での資金繰りなどの資金管理からスタートします。

どの事業でいつまでにどれだけ資金ニーズがあって、会社の投資余力はどれほどあって、不足分はいつまでにどこからどのように調達をして、というようなことを把握する業務です。

 

その後、金融機関からの借入や投資家への社債の発行といったデットファイナンスを経験し、機関投資家やベンチャーキャピタルから調達するエクイティファイナンスへと経験の幅を広げられるとなお良いでしょう。

付言すると、このファイナンスの際に金融機関や投資家と経済条件の交渉であったり、調達に付随する事業計画の作成まで経験できれば素敵です。

 

また、デットファイナンスとエクイティファイナンスのいずれに習熟する方が良いかという疑問に関しては、あなたのキャリア形成次第と言えます。

つまり、スタートアップなどの成長性の高い企業であったり、積極投資に沸く企業への転職が念頭にあるならエクイティファイナンスの経験を積む方が転職しやすくなります。

一方で、企業の多くの資金調達はデット性が中心ですので、デットファイナンスを経験しておくと広くツブシが効かせやすいとも言えます。

【番外】日本版SOX法への対応が急務

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※この章ではコーポレートで最近話題の内部統制について書いていますが、マニアックでしかも本論に影響ありませんので読み飛ばしていただいても大丈夫です。

上場企業において近年注目を浴びているテーマが「日本版SOX法」、通称J-SOXです。

J-SOX(ジェイソックスと読みます)とは内部統制報告制度と日本語では訳されており、上場企業に対して毎年「内部統制報告書」と呼ばれるレポートを有価証券報告書と一緒に内閣総理大臣に提出することを義務付けた制度のことです。

この「内部統制報告書」は公認会計士または監査法人の監査を受けなければならないとされています。

内部統制報告書とは

では、内部統制報告書とは一体どんなものでしょうか?

厳密な定義はさておき簡単に申し上げると、財務諸表を適正に作成するための体制がきちんとできていますよ、ということを自社で検証して報告する書面のことです。

 

なぜそのような制度ができたかというと、2002年に米国のエンロンという巨大企業が起こした会計上の巨額粉飾事件がきっかけで金融市場が大混乱したためです。

粉飾しているかどうかなんて一般投資家には判断できないよ!監査法人すら信じられないようじゃ、安心して投資なんてできないね!というパニック状態に陥ったのです。

そうしたパニックを抑えて安定した金融市場を保つために、「財務諸表などの開示資料が適法な監査をきちんと受けていますよ」と、「粉飾決算がまかりとおる会社システムになってませんよ」ということを表明するために制度が作られたのです。

 

アメリカでSOX法が制定されたことを受けて、日本でも2003年から日本版SOX法が作られました。

今後、経営の透明性と積極的なディスクロージャーを維持することで、失われた信用を回復する必要があり、J-SOXには世界中から期待が集まっています。

財務部が所管するケースが多い内部統制

この日本版SOX法の適用によって、上場企業は会社の財務報告や法律に不正や誤りがないことを見極め、社内の内部統制(=不正の自浄作用)を整備し、「内部監査報告書」を作成しなければなりません。

これを担当するのが財務部(あるいは経理部)であるケースが多いです。

 

内部統制がしっかりしていないと、昨今の東芝のようにグレーやブラックな会計処理が明るみになり、金融市場全体をパニックに陥れる可能性があります。

したがって金融庁など国内外の当局からの内部統制厳格化の要請が強まっていることは、財務担当者として心に留めておかねばなりません。

最後に

財務部の仕事をわかりやすく丁寧に解説するというエントリーでしたが、いかがだったでしょうか?

財務部は社内エリートの部署ですので、決してレシートの金額を電卓で叩くようなレイヤーの仕事ではないことがご理解いただけたのではないかと思っています。

数字に強い、コツコツとエクセルを組んだりすることが得意、財務諸表を読むことが苦ではない、職人気質に憧れるという方などは特にフィットする職種かと思います。

当てはまる方は異動あるいは転職をご検討されてはいかがでしょうか?