2018年2月14日更新 2016年11月16日公開
「極めて専門性の高いとされる投資銀行に、未経験で転職するのは無理なんじゃないか」
そう思われている方に、私は声を大にして伝えたい。
未経験でも大丈夫、転職可能です!
と。
確かに経験者の方が有利なのは間違いありませんが、押さえるポイントを押さえていれば未経験者だって投資銀行への転職は可能です。
外資系投資銀行に在籍していた私が、未経験から転職するポイントを解説します。
- 投資銀行は常に人手不足。未経験でも転職できる
- 未経験で転職しても年収は上がる可能性が高い
- ジュニアバンカーなら30歳まで
- やっぱり高学歴が多いが、文理は関係なし
- ジュニアバンカーへの転職に有利なスキル
- 未経験でも転職するための具体的な方法
- 転職に有利な職業はコンサルと会計士
- 教育制度の整った投資銀行は日系
- 最後に
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投資銀行は常に人手不足。未経験でも転職できる
まず未経験でも現場が欲しがる理由について説明します。
投資銀行は人材の出入りが激しいことで有名です。
よく投資銀行は「3年勤務すればどこに出しても恥ずかしくない」と言われる業界ですので、一通りのスキルセットを備えたバンカーが他社に転職していくことが多く、欠員が出やすいという課題があります。
また、おおよそ3年毎に次のタイトルに昇格するのですが、プロモーションイヤーで昇格できなかった人は初夏に(賞与振込みがあるため)静かに辞めていくというのも一種の慣例行事となっています。
したがって投資銀行は人手不足に常に頭を悩ませているのです。
特にアナリストやアソシエイトといった、いわゆるジュニアバンカーの確保はプライオリティの高い課題となっており、通年で中途の採用活動をしています。
そういった事情もあり、経験者だけでなく未経験であっても優秀さが認められれば門戸は広く開いているというのが実情です。
未経験で転職しても年収は上がる可能性が高い
では実際に投資銀行に転職したら、巷で言われている高給取りになれるのでしょうか?
基本的には前職での経験や能力に応じてタイトルと年次が決まります。
タイトルはアナリストから始まってアソシエイト、ヴァイスプレジデント、ディレクター、マネジングディレクターという具合に職位が上がります。
各タイトルで3年程度経験を積み、4年目に昇級するというのが一般的です。
投資銀行業務が全く未経験という場合はアナリストから出発することが多く、アナリスト1〜3年目で割り振られます。
同じタイトル・年次であれば基本給は横並びですが、能力に応じて賞与で調整するというイメージです。
外資系のアナリスト3年目であれば年収は1,500万円〜2,000万円が目安となります。
ただ、投資銀行に限りませんが、転職した初年度は賞与がない(あってもスズメの涙程度)ということは計算にいれておきましょう。
ジュニアバンカーなら30歳まで
上記の通り、特にジュニアバンカーへの採用ニーズは高いです。
未経験でアナリストの採用であれば、30歳程度までは許容される雰囲気があります。
いわゆる年功序列というものはなく、実力本位な業界ですからそれほど心配する必要はありません。
実際に、28歳で新卒という人も毎年一人くらいはいました。
やっぱり高学歴が多いが、文理は関係なし
実力本位とはいえ、結果的に高学歴のバンカーが多いです。
東大や京大をはじめ、早稲田、慶応がボリュームゾーンとなり、一橋大や旧帝国大学、海外大MBAがちらほらいるという感じです。
それは、多忙なバンカーは面接官として面接のできる回数が多くないため、履歴書の段階で学歴をひとつの重要な要素としてフィルターをかけるためです。
一方で、文系や理系といった区分にはさほど意味がありません。
経済に明るい経済学部が有利そうというイメージがありますが、企業価値評価や分析は数字に強くないとできません。
したがって理系出身者でも採用されるのが投資銀行です。
乱暴に文理で区分することにいささか議論の余地があることは置いといて、大体半々くらいです。
ジュニアバンカーへの転職に有利なスキル
ジュニアバンカーに必要なスキルを整理してみましょう。大きく3つです。
- モデリング
- 法務・税務・会計の各種知識
- エクセル・パワーポイント作業
になります。
①のモデリングを簡単に説明すると、財務三表(P/L、B/S、C/S)を有機的に結合させたエクセルファイルを作成することです。
財務モデルを作成することで、M&Aや資金調達をした際に企業価値がどう向上するかであったり、持分比率はどの程度希薄化するかなど、定量的に分析できるようになります。
②については最低限、MBA用の簡単な参考書が頭に入っている程度が必要です。
すでに業務で財務部や経営企画部に従事しているなら特に問題はありません。
もしも営業職や研究職などに従事している場合は独学で学習しておくと良いです。
③については転職後に研修を受けることになるので、入社前に気にする必要はないでしょう。
ただ、エクセルワークと聞いて「平均値や合計値を計算するくらいだろう」とか「if関数やvlookup関数は知ってるから大丈夫」という程度の認識だとしたら、入社後の研修でパソコンからマウスを外すよう指示されてギョッとするかもしれません。
これらは入社時に持っていると当然即戦力ですが、モデリングなどは未経験者が習得しているはずがありません。
したがって、入社後の研修とOJTでキャッチアップしてくれることを期待して採用をしますので、面接では意欲とポテンシャルをアピールしておきたいところです。
未経験でも転職するための具体的な方法
ではいよいよ本題ですが、未経験でも転職するためにはしっかりとした戦略が必要です。
志望理由を磨き、人物像を固め、企業分析をし、質疑応答を徹底的に練習して、、、
そのためのTIPsをいくつかご案内したいと思います。
業務内容や業界のカルチャーについては最低限学んでおこう
当たり前ですが、業務内容や雰囲気を知らず面接を受けてもさすがに受かりっこありません。
投資銀行を志望する以上、ある程度情報収集が済んでいると想定されますが、とても大切な準備なので面接直前まで貪欲に調べていくべきです。
例えば知人のバンカーがいれば職場の雰囲気や業務内容、商慣習、業界の課題などについてインプットすることはしておきたいですね。
もちろん誰もが運よく知人にバンカーがいるわけではありません。
そういう場合は転職エージェントを探しましょう。
業界に詳しい転職エージェント、これまで投資銀行に人を送り込んできた実績のあるエージェントが望ましいです。
そんなエージェントをビズリーチなどで探します。
そして直近の各社の採用ポジション、採用意欲、そして過去に採用された人物はどのようなバックグラウンドやスキルがあって、どういった志望動機をもっていたかなどは非常に参考に出来るはずです。
エージェントもあなたが転職すればキックバックがあるので、喜んで手を貸してくれるはずです。
まだ終わりません。
さらにオススメなのが投資銀行に関する書籍です。
とくに経済小説系。
実際、投資銀行のバンカーに就職する際に、必ずといって良いほどよく読まれている本があります。
これらは勉強がてら、面接の話のタネにもなって良いかと思います。
ウォールストリート投資銀行残酷日記―サルになれなかった僕たち
- 作者: Peter Troob,John Rolfe,ジョンロルフ,三川基好,ピータートゥルーブ
- 出版社/メーカー: 主婦の友社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 単行本
- 購入: 10人 クリック: 140回
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少し古めのアメリカでのお話です。
ハーバードとプリンストンのMBAホルダー2人が投資銀行に入ってひどい目にあったという実話を、面白おかしく書いています。
単純に読み物としてめっちゃおもしろいです。
「投資銀行は動物園だ」と言うとおり、実に憎たらしい、変な、頭のイッてる、強欲な面々が次々と登場します。
社内でもよく本書の中身がネタにされますし、語り口が最高なのでオススメです。
- 作者: 保田隆明
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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元外資バンカーだった保田氏が、小説形式で投資銀行の仕事ぶり・内情を分かりやすく描いています。
主人公の女性がよくわからないまま投資銀行に入るのですが、七転八倒しながら先輩と一緒にビッグディールをこなしていくというお話です。
業界未経験の人にもわかるように噛み砕いてM&Aの話などが描かれていて、それでいて現場の人間が読んでも間違った説明をしていないので、良くできていると思います。
獅子のごとく 小説 投資銀行日本人パートナー (100周年書き下ろし)
- 作者: 黒木亮
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/27
- メディア: 単行本
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そして最後は「獅子のごとく」。
ゴールドマンサックスの現社長持田氏をモチーフにした主人公が、清濁併せ呑みながら投資銀行の階段を一気に駆け上がっていくというお話。
黒木氏の著書はリアリスティックな作風で、ハリウッド映画のような起承転結がわかりやすいものとはちょっと異なります。
坦々と、それでいて激動に物語が進みます。
衝撃のラストはご自身の目でお確かめください。
英語は神経質に気にしなくて良い
もちろん英語はできるに越したことはないでしょう。
ですが、900点以上とかネイティブレベルとかでなくとも転職は可能です。
TOEICで860点が新卒の最低ラインとされていますので、その水準であれば選考上不利ということはありません。
中途採用ということに鑑みて、余裕を持って900点を目安に取得しておくと安心です。
加えて、英語面接の対策としてスピーキングを練習しておくとなお良いでしょう。
専門的な訓練が必要ではないので、英会話カフェやオンライン英会話を利用して英語のテンプレートを作っておき、最低限途中で詰まらない程度には練習しておきましょう。
投資銀行の求人は原則非公開。エージェントが必須
ここは結論から。
上記にも出てきましたが、転職エージェントはつけましょう。
理由は後述しますが、受かりたいならこれは絶対です。
投資銀行に中途で応募する方法はいくつかあります。
未経験者にとって最も重要なことは情報です。
職場環境云々以前の問題として、業務内容や給与体系といった基本的なことからインプットをする必要があります。
そこで、最も採用の確実性が高い方法は投資銀行で働く友人や知り合いを通じて応募することです。
もし業界に知り合いがいる場合は応募の前に必ず相談してみましょう。
疑問点について忌憚なく根掘り葉掘り聞くことができますし、現場の意見を聞くことができます。
また、投資銀行のポジションは常に応募があると上述しましたが、それがどのポジションかは刻々と変化します。
コンシューマー業界のジュニアバンカーを募集しているのか、インダストリアル業界の財務に明るいシニアバンカーを募集しているのか、応募の前に知っておけばなにかと準備もできるというものです。
もちろんコネがある人ばかりではありませんよね。
そういう人は転職エージェントを通しましょう。
都合よく友人・知人が投資銀行業界にいることは稀でしょうから、多くの方はこの手段を取ることになると思います。
「非公開求人」の壁を乗り越えるためにエージェントを頼ることはマストです。
詳しくは外資系投資銀行の求人は非公開!エージェントを使って内定をもぎ獲る方法に書いていますが、投資銀行の中途採用の情報はエージェントからしか仕入れられません。
会社ホームページには問い合わせ欄しかなく、いちいち各社に問い合わせるしかないのです。(人事が投資銀行の各セクターに問い合わせるので返事も遅い)
また、転職エージェントを通すメリットもあります。
やはり転職に関するプロフェッショナルですから、転職にかかる様々な面でサポートを期待できる点です。
転職のためのプロセスについて質問ができたり、履歴書の添削や面接の練習などまで手助けしてくれます。
未経験者には必須のサポートです。
下記の記事では優秀な転職エージェントの確保の仕方について書いています。
転職エージェントに頼んでよかったこと
投資銀行からの転職ではありましたが、私も転職エージェントを利用しました。
転職が初めてだったのでバシッと内定を決めたかったからです。
個人的には、やはり最新の募集状況を調べてくれる点はすごく助かりました。
上述の通り、企業側が募集していたとしても必ずしも企業HPの採用ページにそれが出ているとは限りません。
そういった場合でもエージェントは喜んで各企業に直接問い合わせてくれますし、その際他の候補者の選考状況も聞ける範囲で入手してくれます。
さらに、面接官に伝え損ねた点や誤解を与えてしまったかもと思ったとき、面接後であってもエージェントに相談すれば、エージェント経由で先方にフォローをいれてくれます。
■バンカーの間では転職サイトのデファクトスタンダード、ビズリーチ!
エージェントを使う上での留意点
これほど頼りになる・便利なエージェントですが、一方で欠点も認識しておかなければなりません。
まず、エージェントはバンカー経験が必ずしもあるわけではないということです。
すなわち、細かい業務内容についてすべて理解しているわけではないですし、それどころか誤った内容を伝えられる可能性も0ではありません。
ホンモノのエージェントかどうか見極める必要があるということです。
2点目は、アタリのエージェントに出会えるのは運であるということす。
「アタリ」というのは、これまで投資銀行に多数転職させた実績があるエージェントのことです。
エージェント探しは、まずエージェントからスカウトメールが届くような求人サイトに登録しておき、何人かのエージェントと直接会って信頼の置ける人か否か品定めするとよいでしょう。
私が転職をした際は5人のエージェントと会って、そのうちの一人にその後の転職活動のお世話になりました。
アタリのエージェントの探し方はこちら【再掲】にまとめています。
転職に有利な職業はコンサルと会計士
投資銀行は業務内容や働き方という点で独特な業界ですが、比較的転職しやすい業界というものは存在します。
戦略系コンサルから転職
コンサルティング会社からの転職は比較的アドバンテージがあります。
働き方(高給・激務)が似ているので業務のイメージがつきやすいことや、コンサルでもM&Aを扱うことがあるということが理由です。
ただ、コンサルでも財務モデルを作成したり企業価値を算出したりということはしますが、深度や精度、ノウハウ、案件数という点では断然投資銀行が優位です。
クライアントの課題全般を扱うコンサルではなく、専門性を身に付けたいという理由で投資銀行に転職するケースが多いようです。
公認会計士から転職
公認会計士の資格保持者で投資銀行に転職する人もいます。
公認会計士資格の取得自体が困難であるため数が多いわけではないですが、試験に合格してから3年程度監査法人に勤務し、晴れて公認会計士登録できてから転職するというケースが多いです。
M&Aにしろ資金調達にしろ、投資銀行業務において財務のプロフェッショナルというのは大変重宝されます。
案件を進めるにあたって弁護士事務所とともに監査法人ともチームを組むのですが、社外のメンバーとメールなり電話でコンタクトをとるというのは少なからずコミュニケーションコストが発生してしまうものです。
公認会計士の転職については下記をご参照ください。
教育制度の整った投資銀行は日系
未経験で転職する場合に、気になるのはやはり教育制度でしょう。
キャッチアップするやる気は誰にも負けないとしても、なんでもかんでもOJTだと学習効率が悪いですよね。
最初に体系立てて研修があると理解が捗り、その後のOJTも有意義になります。
では各社の中途採用者に対する教育制度はどうかというと、必ずしも厚いとはいえません。
新卒と同じタイミングで入社すれば彼らと同じ研修が受けられるチャンスがありますが、通年採用の場合中途半端な時期に入社することも多く、新卒の研修を期待できるとは限りません。
とはいえ企業によってはそのリスクをカバーしているところもあります。
例えば新卒用の研修を外注している場合、数人単位で中途採用がいれば時期外れでも開催してくれます。
また、BloombergやCapital IQなどのベンダーに1人からでもツールの操作に関する研修を受けられるように取り計らってくれることもあります。
例えばBloombergの情報端末は1台あたり年間1億円近く支払っており、ベンダーからすれば投資銀行は上客なので融通を利かせてくれるのです。
(ちなみにBloombergの端末は部内だけでも数十台あります)
日系の投資銀行は比較的教育制度がしっかりしており、投資銀行向けの研修だけでなくグループ企業(銀行や証券会社)向けの研修を受けることもできます。
ただ、必ずしも外資系が放任というわけではないので、採用プロセスの中で人事や面接官に確認してみることが肝要です。
■未経験者にとっては教育体制が大きな判断材料、ビズリーチ!
最後に
以上見てきたとおり、未経験でも転職するための最大のカギは転職エージェントの存在です。
良いエージェントはすぐに見つかるものではありません。
ですので転職を考える始める前から求人サイトに登録し、早めにエージェントを確保して定期的にコミュニケーションをとっておくことをオススメします。
そうすることで準備不足のまま転職をせざるを得ないという最悪の事態を避けられますし、思わぬ良い案件を紹介してくれる可能性も出てくるかもしれませんよ。
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■未経験だからって臆したら負け。自分の120%を見せるくらいの大袈裟な態度でようやく丁度良い、ビズリーチ!