外資系投資銀行への道標

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【証券・監査法人の争奪戦】いまホットなのはIPO業務

2018年4月10日更新 2018年3月9日公開

一躍時の人となるスタートアップ創業者、一攫千金を目指すベンチャーキャピタル、大きな引受け手数料が転がり込んでくる証券会社...

さまざまな利害関係者の思惑が激突するのが新規株式公開、いわゆるIPOです。

そのIPO市場で、今まちがいなく大きな渦が巻き起こっているのをご存知でしょうか。

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IPOをめざしているスタートアップと多数面会をしますが、その際に創業者が口をそろえて言うのが、

数年先までパイプラインがいっぱいだという理由で大手証券会社に断られた

いまや監査法人もつかまらない。ビッグ4がつかまらず、中堅ファームまで広げて引き受け手を探している

ということ。

www.nikkei.com 

また、ファーム側からも同様の話題がよく挙がり、

・引き受けたくてもリソースが手一杯

・逆に、このタイミングで引き受け手を見つけられたスタートアップは相当有望だという証左だ

IPOの引き受け証券 & 監査法人を確保できているということが、出資をする際の判断基準になっているVCもある

といった声を聞きます。

 

この先も当分はこうした流れが続くものと思われますので、そうなるとIPO実務ができる人材にニーズが集まってきます。

投資銀行あるいは証券では、株式公開チームがひとつおもしろい配属先になってくると思っています。

監査法人においても同様に、新規上場の監査チームがよいキャリアになるはずです。

そこで経験を積んで3年後に上場を目指しているようなスタートアップにCFOまたはCOOとして転職すると非常に重用されるでしょう。

既にスタートアップ界隈で、そういった役割を期待されてヘッドハントされている例を見ます。

 

IPO実務ってなんだという方のために、以下でさらっとおさらいだけしておきたいと思います。

主幹事証券の役割

主幹事証券会社の役割は、上場の準備段階から上場後にわたって、さまざまなアドバイスを行うことです。

また、取引所の行う上場審査に先立って、第三者の立場で会社を審査もします。

上場準備の初期

上場スケジュールの策定、事業計画の策定、資本政策の策定、内部統制などの社内管理体制の整備に関して、豊富な知見を以ってアドバイスを提供します。

 

なかでも事業計画の策定は、株式上場の可否や上場時のバリュエーションに影響を及ぼすため非常に重要ですが、スタートアップのなかには事業計画の作り方に慣れておらず、十分なロジックとフィージビリティがある計画を作れないこともよくあります。

ですので、上場に向けてはバリュエーション等で普段作りなれている専門家と一緒に作るということが大切になってきます。

※余談ですが、仕事柄スタートアップの事業計画をよく見ます。しかし、その8割~9割くらいは本当にテキトウな代物です。(本人はいたってマジメに作っているのですが...)

中期

上記の準備の目処が経ってきて、申請書類のドラフトが出来る頃になりますと、今度は主幹事証券の公開引受部門に事前チェックや助言・指導を受けることになります。

一般的には、これだけでも1年超~2年の期間がかかります。

後期

公開引受部門の指導が終わると、主幹事証券の審査部門が、第三者の立場で会社を厳しく審査します。

証券取引所の上場審査に先立って、主幹事証券の審査を受けるというイメージです。

 

このように主幹事の業務は非常に広く、また長期のプロジェクトになります。

主幹事との関係構築は、IPOの成否に大きく関わります。

たとえば、上場時のバリュエーションの考え方を巡って、経営陣と主幹事証券との間で意見の相違があり、どうしてもその差が埋まらない場合は主幹事を別の証券に切り替える、なんていうことも良くある話です。

監査法人の役割

一方で監査法人の主な役割は、証券取引所の上場審査基準で求められる「会計監査」を実施することです。

監査の対象は財務諸表だけでなく、内部統制なども含まれます。

 

当然、スタートアップが上場基準の会計監査を受けるのは初めてです。

その作成に際して最新の会計基準の適用であったり、会計処理の適正化が必要となるのですが、それらについて知見があるわけではないので、監査だけではなく、その指導・助言を実施することも重要な役割となります。

最後に

IPOが増えてきている中で、「IPO請負人」と呼ばれるような人材がいます。

上場準備を始める頃のスタートアップに転職し、見事上場させて、また次のスタートアップに転職をするというひとたちです。

彼らはストックオプションをたんまり貰って上場し、ロックアップが外れたらそこで売却をして、ということを繰り返して界隈で有名になっていきます。

こうしたことが話題になるのも、IPO実務に詳しい人が一部に集中してしまっているからかもしれません。

活況になりつつある今だからこそ、IPO実務に習熟して人材価値を高めるという手段は筋が良いように思います。

 

かつてゴールドラッシュで一番儲かったのは、採掘者ではなくつるはしを売った業者だった、というのは有名な話ですが、いまのIPOに関しても同じことが言えるかもしれませんね。